激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

「その、こんな形でごめん。何を言ってももう戻れないんだけど」

「……昨日、仕事場に姉が怒鳴り込んできた。二度としないように優希からも注意しといて」
「それはすまない。今、妊娠中でカリカリしてるから」
「私にはもう関係ない。私の生活に干渉しないようにして」

 ぴしゃりと言うと、彼の顔が曇った。

「おー。二人とも、どうした、改まって」
 オーナーの金谷さんが、私たちを見て踊りそうなほど軽快に歩いてくる。
 私も両手で手を振ってから、二人と打ち合わせ室へ入った。

 思えばあの日、カフェで二人に妊娠していると告げられてから、優希にかきちんとお別れの言葉はもらっていなかった。
 妊娠したんだから、わかるよな?
 真面目な私が、そういえば引くと分かっているような二人のカミングアウトに、ただただがむしゃらに現実から逃げてしまった。

 今、私の隣で金谷オーナーに必死に謝っている彼を、見たくもなかった。
 ただ彼が頼んだ珈琲が、いつもと同じ香りがする。
 私はこの珈琲の銘柄が、一生嫌いになるかもしれない。

「それで結婚式は中止ってことか」
「はい。金谷オーナーにはお世話になったのに、本当に申し訳ありませんでした」

 私が頭を下げると、隣で優希が大げさに立ち上がった。
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