激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
「私は今、幸せよ」
優希の方へ微笑むと、彼は目を見開いた。
「貴方と結婚しなくてよかったって安堵している」
これでもう優希とは関わらないで済むと確認できたので、彼のスマホから私の連絡先を全て消してもらった。
履歴も消してもらい、連絡手段はほぼ使っていないパソコンのメールアドレスのみにした。
私が淡々と連絡先を消して、優希が本当に連絡先を消したか確認してから、踵を返した。
「じゃあ、貴方も幸せに」
「美優、僕は、美優のことも同じぐらいーー」
「ふ。あまり見っともない台詞は吐かない方がいいぞ」
香りがした。
その香りの方へ視線を向けると、宇柳さんが微笑んでいる。
「良かった。てっきり大乱闘してるかと心配していたのに」
「……流石に我慢しましたよ」
宇柳さんは優希を一瞥したあと、無言で私の肩を引き寄せると、そのまま駐車場へ向かってくれた。
まさかまだ待っていてくれているとは思っていなかった。
私が優希のことでまた精神がめちゃくちゃにならないよう、待っていてくれたのかなって素直に思える。
「一服してくる」
キーケースを渡してくれた宇柳さんは、また駐車場の向こうにあった喫煙所へ。
「美優っ」
まだ優希が何か言っていたけれど、私はその香りの方へ向かって、二度と後ろを振り返らなかった。