激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

「……あっ」

木の門の下が壊れて、小さな動物ならすり抜けてしまいそうだ。
毛が絡まってしまってドアから抜け出せなく、小さな両手足をバタバタさせていた。

「こいつは……こんなに小さくて大丈夫か。天ぷらにするぞ」
「天ぷら!」

ドッと吹き出してしまったけれど、よくよく見ればモップ状の毛が無くなれば小さいかもしれない。

「……宇柳さん、スーツ」
「ああ」
「スーツ汚れますよ」

 モップくんを抱きかかえたら、シャツの胸の部分が茶色く汚れていくのが見えた。

「問題ないだろう。それより素人が洗っても問題ないのかな?」
「わ、私、やり方知ってる。できます!」
「お、流石。シャンプーの材料買いに行くか?」
「……いえ。狂犬病の予防接種してるか分からないですし、怪我をしているかもしれないですし迂闊に触るのは駄目です」
「……ふうん」
 腕の中の、土で薄汚れた犬を見て、彼は少し沈黙した後、私を見た。
「じゃあ行くか」
「行くって」
「動物病院。近くに24時間の動物病院があった」
「……はいっ」
 モップくんを抱きしめたまま、そのまま車を取りに行く。
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