白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
9章:それだけ

 朝起きたらいつものように琥白さんがそこにいた。

「琥白さん?」
「おはよ」

 目を細めて笑う琥白さんはいつもと一緒だけど、場所がいつもの寝室じゃない……。

(そういえば昨日ホテルに泊まって、それから……それから……!)

 慌てて起き上がると、頭がガンガンと痛くて、これは二日酔いだと気づく。
 そんな私に気づいた琥白さんはもう一度私をベッドに沈めた。

「まだチェックアウトまで少し時間あるから急がなくていい。寝てなさい」
「すみません……」

 頭痛い。額に手をやると、昨日のことを思い出して、また頭が痛くなる。
 ああいうときの琥白さんは、最後までしてこないクセにやけに強引だ。

 今は優しい笑顔で笑ってるけど、夜の間の琥白さんのやけに艶っぽい顔を思い出すと、顔が熱くなる。

 お腹がきゅう、と掴まれる感覚がして、なぜだか無性に琥白さんの顔を見たくなった。
 琥白さんをそっと見ると、琥白さんはそれに気づいて嬉しそうに微笑んだ。

 その笑顔を見て、胸まできゅ、と音を立てる。意味がわからない心臓の誤作動に連動するように、思わず目をそらしていた。
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