白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい

 私はコーヒーカップに目線を落とし、
「琥白さんが怒ると思って言ったんです」
と呟いた。

「え?」
「琥白さんに呆れられて、もうお前なんていらないって言われたくて言っただけだから……」

 私が言うと、突然、頭にガツンと衝撃が走った。
 混乱して神尾さんを見ると、神尾さんは驚いたように私の後ろを見ている。

「いっ……痛い!」
「そんなことで俺がふたばに呆れるわけないだろ」

 聞き覚えのある声に頭を抑えて後ろを振り返ると、琥白さんが眉を寄せて私を見下ろしてそう言った。

(叩くとか酷くない⁉︎)

 涙目の私を一瞥すると、琥珀さんは息を吐く。

「神尾、外してくれるか」
「えぇ」

 神尾さんがそこからいなくなって、琥白さんは私の手からコーヒーを取り近くのベンチに置くと、私の両手をそっと握った。

「言っただろ。俺はふたばの前からいなくならない。ふたばのこと、呆れたりしない」
「それが嫌なの」
「どうして」

「私せっかく決めてたのに。もうズカズカ入ってこないで」

「ふたば」


 琥白さんの手に力が籠る。

「何を言われても、この手を離してあげられなくてごめん」

 琥白さんはそう言って、そのまま私の手を強く握り続けた。
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