白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
琥白を呼んでくるね、そう言って、工藤さんは立ち上がって歩いていった。
私は手の中にあるまだ温かいコーヒーを見つめる。
それから少しして、琥白さんの足音が聞こえて、私は不思議とほっとした気持ちになっていた。
「ふたばは大丈夫?」
琥白さんが工藤さんと話す声が聞こえる。
「僕はもう大丈夫だと思うよ?」
「そうか」
「これまで二人がどう過ごしてきたのか僕はよくわかってないけど、ふたばさんはちゃんとわかり始めてる。だからあの時、飛び降りる直前で、足が止まったんだと思うし。ね?」
やってきた工藤さんは私の顔を見て、優しく微笑んだ。その笑みがやっぱりお兄ちゃんに似てると思った。
それから工藤さんはゆっくりした口調で続ける。
「ふたばさん。あなたはきっと大丈夫。これから昌宗の事、少しずつきちんと思い出していけるよ。本当の昌宗のことを」
「本当の……お兄ちゃん?」
「それがわかってくると、きっとふたばさんは自分の未来の事も前向きにとらえられるようになる。琥白と一緒にね。……まぁ、でも、琥白にも言えないこととか琥白への不満ができたら、いつでも来てくれていいからね。僕はいつでもここにいるから」
私が頷くと、俺への不満ってなんだよ、と琥白さんは膨れて、それを見て私と工藤さんは顔を見合わせて笑った。