白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
その時。
「あれ、琥白くん」
「天橋社長」
声をかけてきたのは、叔父さんだった。
ちょうど、会食に出かけるところだったらしく、秘書を連れている。
叔父さんは、私を見て、
「不動産王に、お迎えまでさせてるの? すごいね」
と口端を上げた。
「……」
どう返事しようか悩んでいるうちに、叔父さんは私の耳に口元を寄せる。
「さすが、男を手玉に取るのがうまいよね」
いつだって、何も言い返せない自分が情けない。でも言い返さないことが一番いいんだから。
言っても言わなくても何も変わらない。なら私は何も言わない。
ただ、今日は琥白さんが隣にいる。天橋不動産に関係のないこの人には、そして、関係ないままでいて欲しいこの人には、こんな情けないところを見られるのは嫌だった。