一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「……ときどきそんなふうに家の話をしていたな。まともに聞いたことはなかったが」

「別に、普通の家庭だよ。……ひとり娘が期待外れなこと以外は」

 少なくとも私はほかの家庭を知らない。

「両親とも医者でね。私は医者になれなかった出来損ない。小さい時から医療よりも、海外のいろんな景色や建造物だったり、人と話すことに興味があったんだよね」

 深冬が相槌を打ち、握っていた私の手に自分の指を絡める。

「学校へ通うようになってからもあんまり変わらなかった。理数科目より文系科目が得意で……特に英語が好きだったんだけど、親は海外に行く予定なんかないんだからっていつも怒ってたよ」

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