一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 ブラコンという単語が不意に頭をよぎった。

「杏香を見に来たならもう目的は果たしただろう。こっちは仕事中だ、帰れ」

「アモラリアのスタッフはお客様に親切だって聞いたんだけどな」

「お前に対して親切にする必要はないと周知させておく」

 こんなにも深冬が他人に対して感情を露わにしているのは珍しい気がして目が離せなくなる。

 私がこの状況を楽しんでいると言ったら、後で文句を言われそうだ。

「私もゆっくりお話したいんですがまだ勤務時間中なんです。終わってから夕飯でも一緒に……」

「杏香、気を使わなくていい。智秋がつけあがる」

「お誘いはうれしいけど、今日は妻と娘を優先させる日でね」

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