一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 そういえばこの人は既婚者なのだったと思い出す。京都から家族で旅行に来ているなら、邪魔をするのは申し訳ない。

「今も優先させればいいだろう。さっさと帰れ」

「もともとの目的をまだ果たしてないんだって」

「杏香の顔を見に来たんじゃないのか」

「それもある。一番の目的は『うちに泊まりに来ませんか』って話。新婚旅行もしてないんだろ?」

 彼がうちと言うなら、場所はたちばなしかない。

 ホテル以上に有名な旅館の若旦那から誘いを受けるなんてと、つい気持ちが浮き立った。

「その時は改めて妻と娘を紹介するよ。うちの子がこれがまた本当にかわいくて」

「話は終わったな。出禁になる前に出て行け」
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