一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「いやあ、いいね。きみは話がわかる。聞いてくれよ、前回泊まったホテルでは『対応できません』の一点張りだったんだ。こんなことなら最初からアモラリアにお願いすればよかった。まあその時は予約が埋まってたんだけどね」

 彼が前回泊まったホテルのスタッフに、同じコンシェルジュとして少しだけ同情した。

 朝食の内容を変えるぐらいならばともかく、ベッドの配置を変えろと言うのはなかなか難易度の高い要望だ。宿泊中は彼専用の城だとしても、期間が過ぎれば別のお客様が使用するのだから。

 しかしアモラリアのコンシェルジュデスクでは『改築工事を始めろとでも言われない限りはすべての要望に応える』と決まっている。

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