一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 なにが大丈夫なものか。彼が立ち去った瞬間、彼女に殺されるかもしれないのに。

 こんなところで死ぬ?

 遠ざかる皐月さんの足音を聞きながらぞっとした。

 まだ深冬の想いに応えていない。彼との未来から逃げ続けて答えを出せていない。

 このままで深冬をひとりぼっちにしてしまう。

 十年前、私がされたように。

「離しなさいっ!」

 女性の手首を掴んで少しでも刃物の危険から遠ざかろうとする。

 私は今までなにをしていたのだろう。

 未来がわからないなんて当然ではないか。今日この瞬間に死ぬかもしれないなら、もっと早くに深冬を受け入れればよかった。

< 190 / 261 >

この作品をシェア

pagetop