一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「いや、言う必要がないと思った。子供の頃の話で、今とはなんの関係もないだろう。あれをきっかけに智秋も両親も俺を目の届くところに置きたがるようになったが、それだけだ」

 まだ車を動かそうとしない深冬に向かって少し頭を傾ける。

私が寄りかかりやすいよう肩の位置を調整してくれるあたり、彼はとても甘い。

「言いたくない話以外は聞きたいな。だってこれからは夫婦としてやっていくんでしょ? 隠し事っていうわけじゃないけど、あなたについて知らない話があるのはちょっと寂しいよ」

「もう離婚は本当に諦めたんだな」

「さっきの話を聞いたらますます別れられないよ」

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