一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 深冬は壊れていたと智秋さんが言っていた。

 私が傷付いていた時間と同じだけ、彼も苦しんでいたのだと改めて実感する。

「智秋さんにはびっくりしたけど、怒ってないからね。お兄さんなりにあなたを心配しての言葉だってわかってるから」

「怒った振りぐらいはしておけ。調子に乗らせると後で面倒だ」

「咲良さんたちには仕返ししちゃだめだよ」

 深冬がまだ先ほどの件についてもやついているのを感じ、一応釘を刺しておく。

 彼が本当になにかするとは思わないが、私の中でこの一件は解決したのだと伝える必要があった。

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