一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「もうすぐクリスマスだが欲しいものはあるか? 行きたい場所があるならそれでもいい。十年前のクリスマスの思い出を忘れるぐらい、最高の一日にしよう」

「でも、仕事……」

「仕事を終えてからの話だ」

 深冬は苦笑して私の頬を指でなぞった。

 愛しい指にもっと触れられたいが、残念ながら今夜もおあずけだ。

 同じことを考えたのか、彼の口もとの笑みが深まる。

 きっと私だけしか知らない笑顔だろうと思うと幸せな気持ちになった。

「一か月も待てない。……もう平気では?」

「だめ。安静にしなさいってお医者様に言われたでしょ?」

「……来月、覚悟しておけよ」

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