一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 なぜ彼がここにいるのか、部屋で待っているのではないか。

 いっそ見なかった振りをして横を通り抜けて外へ出てしまおうか。そもそもロビーから外へ出ようなどと思わなければよかったのだ。素直にスタッフ用の出入り口から帰宅すればよかった。

 改めて自分の勤め先の空気を感じておこうなどと思わなければ――立ち尽くす私に気付いて深冬がこちらへ歩み寄ることもなかった。

「お前が上がるのは七時だと聞いていたが?」

 この人は私の就業時間を知っていたのだ。

「初日なので終業後に行うことが多かったんです」

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