一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「お前の中では終わったかもしれないが、俺の中では終わることすらできていない。それに、終わらせたくない」

 激しい感情を秘めた声が私の耳に届いたと思った時にはもう、開きかけた唇が彼のぬくもりに包み込まれていた。

 十年振りのキスは忘れかけていた唇のやわらかさと甘さを私に思い出させる。

 やめてと肩を押しのけることも、彼の頬を叩いて拒むこともできるはずなのに身体が動かない。

 私はこのぬくもりを、彼のキスを十年間求めていたのだと痛いほど強く感じてまぶたが熱くなる。

「……ん、は……っ」

 吐息を漏らしたのは私だったのか、それとも彼だったのか。

< 57 / 261 >

この作品をシェア

pagetop