一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 わからないぐらい吐く息を絡ませて、心地よすぎる眩暈に身をゆだねる。

「どうして……」

 キスの合間につぶやくと、彼の背後でエレベーターの扉が開いた。

 すぐに降りるかと思いきや、名残り惜しげにもう一度唇をついばまれる。

「我慢できなかった」

 どうしてというのはなぜキスをしたのかという質問ではない。いや、ある意味ではそうだが、私が言いたかったのは『どうして十年前に終わらせたくせにキスをするのか』だ。

 深冬はロビーから私を連れ出した時と同じように手首を掴み、閉じかけた扉をボタンで開いて廊下に出た。

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