一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
「夕飯はまだだろう? ルームサービスを頼もう。好きなものを選べ」

「そんな、ご馳走してもらうわけにはいかないよ」

「ここで働くのなら、スタッフの仕事振りを客として知っておくべきだ」

 彼は昔もこんなふうに口がうまかっただろうか?

 もっともだと思わされて謎の敗北感を覚えながら、渋々彼からメニューを受け取る。

「値段が書いてないけど……」

「アモラリアスイートに宿泊する客はそういうのを嫌がる。……この部屋は、このホテルは現実を忘れるための憩いの場所だ。金額が書かれていると現実に引き戻されるということなんだろう」

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