片恋
一分ほど経ったあと、再び放送が再開された。


『し、失礼しました。それでは、今日の一曲をお聴き下さい。ナデシコの“Flower”』


私と延藤くんは、同時にスピーカーを見上げる。

そこから聴こえてきたのは、数え切れないほどに何度も耳にした、中学時代の伊月くんの声じゃなくて……。


「……アカペラ?」


思わず呟いた。

イントロも何も無く、楽器の音が何も無い。

歌声だけが、ただ響いていた。


「はぁ~、マジか……」


延藤くんが、目を手で覆う。


「なんだよ、今も俺、全然勝てないんじゃん」


その呟きは悔しそうで、だけどどこか笑っているように聞こえた。
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