片恋
私のそばにいるためって……。


「え……、それだけで?」

「それだけとか言うなよ。俺には、大問題だったんだからさ」


ムッと眉を寄せて、少しプクッとむくれる姿は、伊月くんらしくなくて、可愛い。


「さんざん恋の歌とか作ってきてもさ、自分のことになると、肝心な時に全然役に立たないんだよな」


困ったように笑う顔が、逆光で眩しい。


「俺、真桜に会うまではずっと歌えなくて、新しい曲も作れなくて、もう無理だって思ってたんだ」


風が吹き抜ける。

横に流れる髪の毛が視界を隠して、風が止んだ時、そこには笑顔があった。
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