エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
ますます意味がわからなくなり、怖々と探るように質問した。
新海さんが黙って鷹揚に腕組みをした時、


「新海さん、当たりだ。形状から見て、Sで間違いない」


田込さんのドスが効いた声が割って入った。


「え、エス……?」

「やっぱりそうか。グラムは?」


振り返って田込さんに聞き返した私を、新海さんの質問が阻む。
田込さんが、箱の中から、小さなビニール袋を摘まみ上げた。


「え……」


予想していたお菓子には到底見えない、砂糖の結晶体のようなものが、ごく少量入っている。


「十グラムってとこですね。末端価格で十から十五万くらいか」


田込さんが淡々と目算するのを聞いて、私はひくっと喉を鳴らした。
〝エス〟がなんだかわからなくても、彼らの職業から連想すれば、よからぬ危険物に決まってる……!
悪い勘が働き、心臓がドクドクと騒ぎ始める。


「ちょっ、ちょっと待ってください」


目眩がしそうになって、額に手を当てて深呼吸した。
私が気を取り直すより早く、新海さんが、「あなたのお名前は?」と問いかけてくる。


「菅野歩です。あの……」

「菅野歩。午後二時三十三分、覚醒剤所持の現行犯で逮捕する」

「ひえっ」


田込さんが意気揚々と宣言するのを聞いて、私は妙な声を漏らして縮み上がった。


「田込さん。マトリに逮捕権限はありませんよ」
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