エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
警視庁に戻り、捜査一課のオフィスに入ると、ちょうど取調べを終えてデスクにいた朝峰が、俺を見た途端、目を丸くした。


「瀬名さん? どうしたんですか、その猫」


俺の上着のポケットから顔を出している黒い子猫を目敏く見つけて、あんぐりと口を開けている。


「ああ……ちょっとな」


そう言いながら自分のデスクに着き、猫を引き取ってきた経緯を手短に語る。


「ぶっ……」


朝峰が、遠慮なく吹き出した。


「それで、飼い主が現れるまで、自分の家で保護すると?」


足を組み、肩を揺らしてくっくっと笑う。


「菅野さんには逃げられたことだし、別の保護癖でもついたんですか?」

「……うるさい。黙れ」


ニヤニヤしながら探られて、俺は忌々しい気分で、低い声で短く制した。


「それより、今日の取調べはどうだったんだ。作倉の最長勾留期限は迫っている。大島の二の舞にしてみろ。身内とはいえ、俺は躊躇なくお前の首を……」

「最近、気が抜けた炭酸水みたいだったのに。悪魔再降臨ですか」


朝峰は怯みもせずに、軽い揶揄で返してくる。
俺がムッと唇を結ぶと、ひょいと肩を竦めた。


「弁護士がついて、接見するようになってから、裏知恵を入れられてるのか、わりと慎重なんですよ」
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