エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
ところが、軽自動車は幅寄せしてきて、私のすぐ横で停まった。
予想外の事態に、心臓が口から飛び出そうなほど跳ね上がる。
助手席の窓がゆっくり下がって、短髪の男の人が顔を出した。


「すみません」

「は、はい」


ドキドキと早鐘のように打つ胸に手を当て、返事をした。


「道に迷ってしまって。教えてもらえますか」

「え?」


なんだ、道を聞かれるだけだったのか……。
驚きすぎな自分が滑稽で、きまり悪い。


「すみません、私もあまり詳しくないんですけど……」


気を取り直して一歩前に出ると、車内の様子も目に飛び込んできた。
運転席にいるのも、男の人。
そして――カーナビは、ちゃんと装備されている。


「あれ……?」


一気に不審感が膨らむと同時に、このふたりに既視感を覚えた。
昨夜私を追い越していった、サラリーマンの姿が網膜に浮かび上がる。


「っ……」


私は、弾かれたように、軽自動車から離れた。
今度は迷わず走り出そうとして……。


「怪我したくなきゃ、暴れないで。大人しく乗りなさい」


短いやり取りの間に、後ろを歩いていた女性が車の後部から回ってきて、目の前に立ち塞がっていた。
真正面から向かい合ってみて気付く。
昨夜見たカップルの、女性の方……。
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