エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
――この人たちは、仲間だったってこと?
つまり、私は……すでに昨夜、この人たちに包囲されていたんだ。


「……っ!」


確かな身の危険の予感に、頭にまで鳥肌が立った。
――逃げなきゃ。
閃光のように脳裏を貫いた、今私が取るべきたったひとつの行動。


考える余裕もなく、回れ右をしようとして、私はギクッと身体を強張らせた。
短髪の男性が助手席から降り、開いたドアと自分の身体で、私の行く手を阻んでいる。


「大人しく乗れ。二度言わせるな」


威圧的に見下ろされ、背筋に嫌な汗が伝った。
足を竦ませる私の後ろで、女性が後部座席のドアをスライドさせていた。


「ほら」

「あっ……!」


男性の手で乱暴に押し込まれ、私は狭いシートに転がった。
後から女性が乗り込み、バタンと音を立ててドアを閉める。


「よし。早く出せ!」


男性が助手席に戻り、短く命令したけれど、車は動かない。
私はガタガタ震えながら、身体を起こした。


フロントガラスの向こうに、黒いベンツが停まっているのが見える。
車が発進しなかったのは、通せんぼされていたからだ。


「くそっ、邪魔な」


運転席の男性が、苛立ちも露わに、けたたましいクラクションを鳴らす。
だけど、ベンツはビクとも動かない。
< 219 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop