エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「歩っ!!」


純平さんの声が、薄暗い通りに響き渡った。
私はハッとして、バックガラス越しに彼の姿を捜した。
純平さんは、そこに立ち上がりながら……。


「飛び降りろ、歩っ!!」


鋭い声に導かれ、私は女性の腕に思いっきり噛みついた。


「ぎゃっ!」


踏んづけられた猫のような悲鳴と共に、拘束が緩む。
その隙を逃さず、グンとアクセルを踏み込む軽自動車から、ためらうことなく飛び降りた。


鈍い痛みを覚悟して、無意識にギュッと目を瞑り、歯を食いしばる。
次の瞬間、私はゴロンゴロンと地面を転がった。


一瞬、前後左右の感覚も飛んだ。
けれど、アスファルトに叩きつけられた衝撃が収まっても、覚悟した痛みは一向に訪れない。


「……?」


恐る恐る顔を上げると、純平さんが私の下敷きになって、わずかに顔を歪ませていた。


「うっ……」

「じゅ、純平さんっ!!」


私が地面に叩きつけられる寸前で、彼が庇ってくれたのだと、一気に理解が繋がる。


「純平さん、どこか怪我……!」

「騒ぐな。このくらい大したことない。警察の身体能力を舐めるな」


純平さんは顔をしかめながら、地面に肘をつき、上体を起こした。
そして。


「お前は? どこか痛いところは? アイツらに、なにもされてないか!?」


堰を切ったように、矢継ぎ早に訊ねてくる。
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