エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「え?じゃないですよ!」


私は、子猫を抱いたまま、その場にスッと立ち上がった。


「そうだ。私も、純平さんに名前で呼んでもらったこと、数えるほどしかないです!」


純平さんは、俄然勢いづく私を、呆気に取られたように見上げているけれど。


「私、今日から純平さんの彼女になったんですよね? だったら、ちゃんと〝歩〟って呼んでください!」

「……にゃあ」

「これからは、『おい』とか『お前』じゃ、返事しませんからね。〝歩〟って呼ばれた時以外は……」

「にゃああっ」


子猫が、やけに反応して鳴く。


「ん?」


私は当惑して、顎を引いて胸元の子猫に目を落とした。


「……〝歩〟?」

「にゃあん」


ちょっと吊り上がった黄色い目が、私の呼びかけに反応する。
私がきょとんとして、何度も瞬きを繰り返していると……。


「〝歩〟じゃない。〝鮎〟だ」


純平さんが勢いよく立ち上がって、私の腕から子猫を摘まみ上げた。


「あ、あゆ?」

「魚の〝鮎〟。お前の言う通り、『おい』にも『お前』にも反応しなかったから、とにかくなにか呼び名を、と。昼に鮎の塩焼きを食べた日だったから……」

「でも……〝鮎〟に反応してくれませんけど?」
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