エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
すぐにパクパクと食べ進める俺に、彼女もホッと安堵した息を漏らす。


「よかった~。純平さんも、うちの味気に入ってくれて」


自分も食事の手を再開してから、なにやら上目遣いに窺ってくる。


「今度は、なんだ」


茶碗を置いて促してやると、改まった様子でピンと背筋を伸ばした。


「無理にとは言いませんけど……デザートも、作ったんです」

「デザート?」

「ミルクプリン。純平さんでも食べられるように、甘さ控えめの」


早口で言い切って、俺の反応を探ってくる。


「俺は、甘いものは嫌いなんだが」


味噌汁の椀を手に取り、目を伏せ一口啜ってから返事をした。


「ですよね! だから、無理にとは……」

「だが、お前が作ったものなら、なんでも食べる。味は確実だしな」

「!」


テーブルに椀を置き、ふっと目線を上げると……。


「ん? どうした? お前」


歩が火を噴きそうな勢いで、茹でダコのように顔を染めていた。


「なんか、その……偽装じゃなくなるだけで、純平さんがこんなに甘々になるなんて。幸せ噛みしめてました……」


暑くもないのに、手の甲で額の汗を拭く仕草を見せる。


「甘々? 大して変えてないが」

「無自覚でそれですか……もう、堪らない」


真っ赤な顔を伏せ、やたらせかせかと食べ進める様を、頬杖をついて眺め……。


「……ふっ」


俺も、満ち足りた気分で目尻を下げた。
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