エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
ニュースにのめり込むうちに、胸がドクッドクッと強い拍動を始めていた。


『また、この女性に対する誘拐未遂、警察への器物損壊罪などの罪に問われた、作倉の仲間三人についても、初公判が行われました』


誘拐未遂――。
あの時の恐怖は、今でも胸に巣食っている。
いやがおうにも思い出し、ゾクッと身を震わせると、


「にゃあお」


この半年でだいぶ大きくなった黒猫の〝歩〟が、私の足に頭を擦りつけてきた。
その柔らかい感触に、一瞬ビクッとする。
猫に目を落とし、無意識にホッと息を吐きながら、


「……大丈夫よ、あゆみん」


半分自分に言い聞かせて、両手で抱き上げた。
胸にぎゅうっと抱きしめ、早鐘のような鼓動を落ち着かせようとする。


「私は、純平さんが助け出してくれた。あの人たちにも、ちゃんと罰が下る……」


猫に頬ずりして、肩を動かして息をついた。


「私もあゆみんも、純平さんがずっと守ってくれる。ね」

「なーお」


猫は一声鳴くと、私の手を擦り抜け、トンと床に降りた。
長い尻尾を立てて、マイペースに歩いていく。


交番に届けられて半年経っても飼い主が現れず、純平さんが正式に引き取った猫。
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