エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
彼がなにか警戒するように黙り込んでも、「へえ」と訳知り顔でニヤリと笑う。


「わー、可愛い! 歩、抱いてもいい?」

「う、うん。もちろん……」


桃子が私の名前を呼ぶ度に、猫は自分が呼ばれていると思い込み、「にゃあにゃあ」と反応する。


「……ん? どうしたの、猫ちゃん」


訝しげに首を傾げる彼女にヒヤヒヤしながら、私は純平さんを気にした。
というのも、昨夜——。
今日、ふたりを迎えるにあたって、彼に『猫の名前は教えるな。もちろん、名付けの経緯についても他言無用だ』と、強く念を押されたからだ。


「ふたりとも、上がって」


彼女が質問するのを阻止しようとしてか、やけに愛想よく中に促している。


「お邪魔しまーす」


朝峰さんはニヤニヤしながら、スリッパに足を突っ込んだ。
桃子も猫を抱いたまま、「お邪魔します」と廊下に上がる。


「あ。歩、これ。結婚祝い」


思い出したように、腕に下げていた紙バッグを、私に差し出した。


「にゃあ」

「あ、ありがと……」


彼女が私を呼んで、猫が鳴く度に、純平さんの背中が力むようで、気が気じゃない。


「歩、欲しいって言ってたでしょ。ホーロー鍋」

「え、ほんと? 嬉しい。ありが……」

「にゃーお」
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