エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「あれ? でも、偽装結婚って犯罪じゃ? もし警察にバレたら、私も瀬名さんも逮捕される……?」


これは一大事と合点した途端、激しい緊張が込み上げてきた。


「大変。絶対バレないように、立派な妻にならないと……」


真剣な顔で、ブツブツと独り言ちると。


「……くっ」


瀬名さんが、小気味よく肩を動かした。


「くっくっくっ……あー、ヤバ」


最初からずっと冷ややかで、表情の変化といったら、私を小馬鹿にする時に眉尻が上がるくらいだった彼が、本当に愉快そうに声を漏らして笑っている。


「あ……」


普段無表情な人の笑顔に、私の心は鷲掴みにされた。
私の方こそヤバい。
瀬名さんって、笑うとちょっと可愛いかも……。


超レアな笑顔がものすごく尊くて、心臓への破壊力が半端じゃない。
この表情に、全部持っていかれた気分。


私の胸が、ドッドッと早鐘のように打ち出した。
そうとも知らず、瀬名さんは口元に手を遣って、ひとしきり笑った後。


「お前、名前なんて言ったっけ?」

「え、そこ!? ……菅野です。菅野歩」

「歩、ね。了解」


電話でちゃんと名乗ったのに、記憶に留めてもらえていなかったことに憤慨するより、さらりと下の名前で呼ばれたドキドキの方が優った。
思わず両手を胸に当てる私に、瀬名さんは顎を撫でながら、ふっと目を細める。
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