エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「それじゃあ、早速務めを果たしてもらおうか。立派な妻の」


なにか企むような瞳にギクッとする私を、いきなり横抱きに抱え上げた。


「え? きゃっ!?」


人生初のお姫様抱っこ。
足を掬われる感覚に怯み、彼の首に両腕を回してしがみついてしまった。
瀬名さんはリビングを突っ切り、奥の階段に向かっていく。


「えっと、どこに……」


恐る恐る問いかけながら、顔の近さにギョッとして、私は慌ててパッと両腕を離した。


「寝室は、メゾネットフロアにある」


淡々とした返答が、すぐ耳元から聞こえる。


「し、寝室?」


無駄に身を縮こめ固まりながら、上擦った声で訊ねた。
彼は軽い相槌だけして、トントンと小気味よい足音を立てて、階段を上っていく。


メゾネットフロアの一番奥が、寝室だった。
瀬名さんは、そのど真ん中に鎮座している、高級ホテル並みに立派なキングサイズのベッドに直進する。


「ひゃっ……!」


私は半ばベッドに放り投げられ、スプリングが弾む衝撃をやり過ごした。
すぐにベッドに肘を突き、身を捩って上体を起こす。


「あ、あの……?」

「偽装でも、限りなく真実に近付ければ、〝犯罪〟という罪悪感も湧かないだろ?」


瀬名さんも、ベッドに乗り上げて来ながら、そう言った。
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