エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
『それは……だって。純平さん警察なのに。あまりたくさんの人に、偽装結婚を知られるのはどうか、って』


言いながらモヤモヤして、口を噤んだ。
純平さんは、私を視界の端に映し、『ふん』と鼻を鳴らし……。


『まあ、その通りだな。そのうち解消する関係だ。職場の同僚にまで、偽装結婚を吹聴して回る必要はない。お前にしては、機転が利いた』


私の胸に、さらにチクリと傷を残し、前を向いてしまった。
その後、マンションに帰ると、ちょうどエントランスに下りてきた住人夫婦と顔を合わせた。
純平さんとは顔見知りのようで、『あ、瀬名さん!』と、男性の方が声をかけてきた。


『なんでも、ご結婚されたとか……』


女性から品定めするような視線を受け、思わず肩を縮める私の横で、純平さんが『ええ』と返した。


『妻の歩です。以後、よろしくお願いします』


ここでは、私を〝妻〟と紹介する。
男性が、『こちらこそ』と笑ってくれた。
だけど、すれ違いざまで、


『年が離れてるのかしら? 奥様というより、妹さんみたいね』


女性がコソッと男性に告げるのを、私はしっかり聞き拾ってしまい――。
純平さんを私の兄だと信じ、紹介してほしいと言う桃子を前に、今また、胸がチクチクする。
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