身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「これは……オセロ?」

「こっちはジェンガに黒ひげ……。これで仲良く時間を潰せと?」

仁が苦笑する。最後の箱に入っていたのはチェスだ。木製のボードはアンティーク調で駒は真鍮、レトロで洒落ている。

「素敵なデザインのチェスですね……でもごめんなさい、私、ルールを知らなくて」

「将棋なら知っているか? 大体似たようなものだ」

椿がこくんと頷くと、仁は箱からチェス盤を取り出した。

「取った駒を再配置しない分、チェスの方が将棋より単純だ。ルークは飛車、ビショップは角、ナイトが桂馬――」

仁が駒の動きを説明しながら、慣れた様子で盤に並べる。

「――まぁ、厳密にはいろいろあるんだが、将棋風チェスでいくか」

将棋のルールは父親から教わり、菖蒲を相手に何度か指したことがあるが、まともに勝った記憶がない。将棋より簡単ならば椿にもできるだろうか。

仁に教わりながら初めてのチェスをプレイする。

仁はたびたび「そこ、取られるぞ」「放っておいていいのか?」とヒントをくれたが、結果は惨敗。結局椿は将棋もチェスも向いていないことが判明した。

「弱すぎる」

仁はどや顔どころかあきれ顔。

「参りました……」

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