身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「式までにはきちんと帰ってきたじゃない! それがなによ、中止にして今度は妹の方と結婚する? そんなふざけた要求を聞くなんてバカじゃないの!?」

母がふたりの仲裁に入ろうとおろおろしている。

だが、こうなると一歩引いてしまうのが母だ。だからこそ父が異常なまでの亭主関白になってしまったのだとも言える。

見かねた椿が菖蒲に純粋な疑問をぶつけた。

「お姉ちゃん。どうして帰ってきたの? 好きな人と一緒になるんじゃなかったの?」

菖蒲が帰ってきたということは、相手の男性はどうなってしまったのだろう?

すると菖蒲は両親と椿を順繰りに睨み、わなわなと唇を震わせた。

「……あんたたちが私の価値にまったく気づかないからよ……」

椿も両親も、菖蒲がなにに対して怒っているのか見当がつかない。

そんな家族を見て菖蒲はさらに怒りを爆発させ立ち上がった。

「みなせ屋が続いていけるのは誰のおかげだと思ってるの!? 私が体を張って京蕗家に嫁ぐからでしょう! なのに、お父さんは私の意見に耳を貸さないし、お母さんは見て見ぬ振り、椿は自分のことしか頭にない。ちょっとは私を敬いなさいよ!」

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