身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
そう謝罪したのは京蕗家の現当主で、仁の父親だ。

仁に似て目元が涼しげで、男の色気がにじみ出るモテ男といった印象の男性だった。もう六十に近いはずなのに、あまり歳を感じさせない。

「結婚の意志が固まったから椿を妊娠させたんだ」

詫びる父親の横で、当の仁はしらっと計画的妊娠を匂わせる。

「本当にすまないね、椿さん。こんな横暴な息子で」

「と、とんでもない……」

椿の前に紅茶が運ばれてくる。ノンカフェインのルイボスティーだそうだ。

椿と仁がティータイムの十五時に訪れると知り、最高級の紅茶と、三ツ星ホテルで働く有名パティシエの作った特製ケーキを準備して待っていてくれた。

ちなみにケーキは買ってきたのではなく、自宅にパティシエを呼んで作らせたそうだ。

「先日、椿さんのご両親を我が家にお招きしたときに、椿さんを早々と妊娠させてしまったことを謝罪したんだが、いやー焦った焦った。こういうとき、親はどんな顔をすればいいのかと」

当の椿の両親は京蕗家の立派すぎる豪邸と、とんでもない高級料理の数々に圧倒され、それどころではなかったようだが。それらも謝罪の一環だったのだろう。

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