身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
「完璧主義でかわいげのない息子がどんな豪傑連れてくるかと思ってたけど、椿さんみたいな優しい人で本当によかったよ」

「豪傑って……」

呆れた仁の突っ込みに、椿も女性に形容する言葉ではないなあと首を捻る。

「本当に。嫁にいじめられたらどうしようかと思ってたの……」

そう気弱そうに発言したのは仁の母親。仁の年齢から考えて少なく見積もっても五十歳は越えているはずなのに、とても若々しく美しい。

ふたり並ぶ姿を見て、美男美女夫婦だなあと思わず見惚れてしまった椿だ。

「母さんがいじめられてどうする。とはいえ、椿をいじめないでくれよ」

「母さんがいじめたりすると思うかい?」

仁の父親があっはっはと笑う。仁の母親は嫁をいびるようなタイプではないらしく、見るからにおっとりとしていてマイペースだ。

当主夫人というからどんな人かと思い身構えていたが、無邪気な表情で見つめられ毒気を抜かれた。

「娘ができるなんて嬉しいわぁ。一緒にお着物でおでかけするのも楽しそうねぇ。私のお着物、見立ててくれないかしら」

「喜んで」と椿が笑顔で答えると、母親は「まぁ、嬉しい!」と言って手を打ち合わせた。

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