身代わり花嫁は若き帝王の愛を孕む~政略夫婦の淫らにとろける懐妊譚~
しゅんと小さくなっていると、仁は椿の手からずんだラテを奪い取った。

「あ」と椿が反応する頃にはもう、仁はストローをくわえている。

「姉のことは考えるな。君は君でいい。それから、すぐに謝る癖をどうにかしてくれ。いじめているようで気が滅入る」

「すみま――わかりました」

気まずい空気が漂う中、ストローを離した仁がぽつりとこぼす。

「思ったよりうまいな、コレ」

呟きが聞こえた瞬間、椿は目をパカッと大きく開けた。

この店には何度か訪れたことがあるのだが、ずんだ系のメニューが豊富で気に入っていたのだ。

ずんだの粒々が際立って生っぽさが残っているにもかかわらず、ミルク、そしてその上に載った生クリームと見事に調和している。絶妙な塩梅だ。

「おいしいですよね、ずんだのスイーツ! ラテは他にも抹茶ラテやきなこラテもあるんですが、ずんだが一番おいしいと私は思ってます!」

「そのラインナップからずんだを選んだときは正直驚いたが、正解だったな」

「ずんだパフェやずんだショートもおいしいんですよ! 次に来た時にはぜひ――」

「よし、頼んでみるか」

すかさず仁は手を挙げて店員を呼ぶ。

「え、や、でも、夕飯が食べられなくなるのでは」

「そのときはそのときだ」
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