過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
「……はあ……。やっと捕まえた」
私を味わい尽くして満足したのか、今度は切なそうにそう呟いてぎゅうっと私を抱き締める。
久しぶりのその温もりに、香りに、胸がきゅうっと締め付けられるけど、まだうまく働かない頭でここが会社であることを思い出す。
「……こっ、ここ会社………!」
「安心しろ。ここにはオレしかいない」
「そういうことじゃなくて……っ!せっ、専務っ、離して下さい……っ」
そう言ってジタバタする私をものともせず、彼は抱き締める腕にさらにぎゅーっと力を込める。
「やだ。だってお前、離したら逃げるだろ」
「……に、逃げませんから……っ」
「離さない」
「会議室の片付け、しないとならないですから……っ」
身を捩ってもう一度解放を要求するが、
「そんなのは後でいい。だからもうちょい大人しくオレの腕の中にいろ」
そう即答されてしまえば、いよいよどくんどくんと脈打つ自分の心臓の音に耐えきれなくなって来る。