過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
ついこの間までファーストキスすら未経験だった私だけど、性急に求められるようなそのキスに堪らなくなって、侵入して来た大我の舌に恐る恐る自分の舌を差し出した。

一瞬驚いたように舌の動きを止めた大我だったけれど、次の瞬間にはその情欲を全てぶつけるように私の頭を掻き抱き私の舌を執拗に攻め立てる。

「……んっ、んぁ……っ」

そうして骨抜きにされてしまった身体が崩れ落ちそうになるところで、大我がやっと私の唇を解放した。

「っはぁ……っ!」

大我の胸にしがみつき、涙目になりながら私は肩で息をする。

「……オレがこんなに情欲を抑えられなくなるのも、大切に思うのも羽衣だけだ。お前以外に大切なヤツなんていねえ……」

その欲を堪えた様子で大我が私を抱き締め、頭を撫でたり髪の毛にキスを落としたり。

そうしながら紡がれるその言葉は、心が震えるほど嬉しい。

でも私の頭に過ぎるのは、あの日、大我が桃ちゃんに向けていた顔。

"愛おしくて堪らない"

大我は間違いなくそんな顔で桃ちゃんを見つめていたから。
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