過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
大我は家ではあまり仕事の話はしない。
だから今日雑誌の取材を受けることも、今渚さんから聞いてはじめて知った。
「何でもそのチョコレート、専務が企画から携わって商品化した肝煎りのチョコレートなんだって。詳細はまだごく一部の人にしか知らされてないみたい」
「……一部の人しか知らないのに、渚さん、よく知ってますね……?」
「同期が企画部と商品開発部にいてね、聞いちゃったんだよねえ」
えへ、そう聞こえて来そうな茶目っ気たっぷりの笑顔を見せる渚さん。
ラピスは定番商品に加え、毎年クリスマスとバレンタインに合わせて新商品を発売する。
今回のクリスマスに向けた新商品は、専務の肝煎りチョコレート……。
「……一体どんなチョコレートなんでしょう」
気になるけど、本人に聞いたって一部の人しか知り得ない情報なんて、きっと私になんか教えてくれるはずないだろうしな。
「ねっ、気になるよねっ!今日の取材、こっそり覗きに行きたいくらいだよー」
「ふふ、渚さん、本当に行っちゃいそう」
「え、行っていい?」
「ダメです」
「即答ー!」
なんて2人で笑い合っていると、受付の内線が鳴る。
会議室の片付けを依頼する電話だった。