シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 何か勘違いされてる様な気がしてさらに言葉を重ねようとしたけれど、颯介さんは立ち上がって「まあいいか」と歩き出した。

「プライベート空間は必要だしな。案内するよ」

 と、リビングの出口のドアを開く。

「うぅ……」

 何だかからかわれただけのような気がしてちょっと悔しい。

 でも案内してくれると言うならついていくしか無いと思ってリビングを出た。


「つってもさ、3階はギンしか使ってないから残りの部屋どっち使っても良いんだけどな」

 玄関から見て左側にある階段を上りながら、颯介さんは言う。

「そうなんですか?」

「ああ、俺たちはみんな2階使ってるし」

「それじゃあ――」

「取り敢えずギンの部屋の隣にしとこっか?」

「……」

 わたしが選ぶ前にそう言って笑顔でわたしを見下ろす颯介さん。

 どっちでも良いって言ったのに……。


「……まあ、別にそれで良いですけどね」

 真ん中の一部屋が空いているってのも何か変な感じするし。


 3階につくと、颯介さんは真ん中の部屋のドアを開けて電気をつけてくれる。

「ベッドがマットレス付きで備え付けてあるから、後でシーツと掛け布団を1階から持ってくれば使えるだろ。他はクローゼットがあるだけのシンプルな部屋だよ」

 そんな説明を聞きながらわたしはベッド横に荷物を置いてぐるりと軽く部屋を見渡した。
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