シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 ものがない状態だから分かりにくいけれど、多分隣のギンの部屋と同じ間取りだろう。

 結構広い。


「まあ、とりあえずは寝られればいいですからね」

 いつまでいることになるのかも分からないし。

 なんて思いながらわたしはドアの方へ戻る。


「あれ? 荷物出さないの?」

 このままバッグから荷物を出して整理すると思ったんだろうか。

 颯介さんは不思議そうに聞いてきた。


「いえ、それはまた後で。洗濯物乾燥機に入れなきゃないですし、ギンにリビングで待ってろって言われたので」

 何か話でもあるんじゃないのかな? と言って部屋を出ようとすると、目の前に腕を突き出されて通せんぼされてしまう。


「……颯介さん?」

「まあ待ってよ。ちょっと話したいことがあるし」

 部屋から出さないようにされたことで少し警戒心が沸いたけれど、見上げた顔は普段と変わりない様に見えた。

 本当にただ話があるだけなのかもしれない。


「ちょっと座って話そう」

 そう言って中に戻るよう促される。

 バタンと閉まったドアにカギをかけるようなこともなかったから、やっぱり本当に話があるだけみたいだ。
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