シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 ギンの大事な存在。

 自覚が全くないわけじゃあなかったけれど、第三者から語られるとまた違った実感のようなものを感じる。


「《黒銀》はギンに憧れてついてきた奴らが集まってできたチームだ。ギンの意思を忠実に守る」

 だから、《黒銀》に属するすべての人間がわたしを守るのだと怖いくらい真剣な眼差しを向けられた。

 思わずゴクリと唾を飲み込むと、その眼差しの力がフッと緩む。


「俺がこの話したの、ギンには内緒な? ユキちゃんに言うなよって口止めされてたんだ」

「え?」

「でもさ、俺はちゃんとユキちゃんにも知っておいてもらいたかった。ギンがどれだけ君を思っているのかを」

「……」


 昨日から向けられている思いだけでもギンに求められているのは分かっていた。

 それがとても強い思いだってことも。


 でも、具体的な形として今示される。

 守る。

 そんな形で。


「ユキちゃんがギンを受け入れるかどうかは俺が決めることじゃないから口出ししないけどさ……ちゃんとギンを知って、受け止めてやってくれよ」

「颯介さん……」

「頼むから、拒絶だけはしないでやってくれ」

「……」
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