シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
「……颯介さんはギンのことが大事なんですね?」

 ドアを開けて待ってくれている颯介さんに、純粋な疑問を口にする。

 もともと仲は良さそうと思っていたけれど、わたしが思っていたよりも颯介さんはギンを大事に思っているみたいだったから。


「あー……まあ、そうだな。俺もギンに憧れてついてきたタチだし? それに感謝もしてるから」

「感謝?」

「ああ、三つ子を助けてくれたからな」

「え?」

 突然出てきた三つ子の話に軽く驚く。

 颯介さんは歩き出しながら苦虫を噛み潰したような表情で続けた。


「三つ子と俺はさっき言った恨みを買ってるっていう族にいたんだ。強さで従わせるような連中で、仲間でも殴る蹴るは日常茶飯事だった」

「そんな……」

「特に三つ子は酷かったよ。サイバー犯罪まがいのことさせられてたし、本気でヤバそうな案件を断ったらかなり痛めつけられてたし……」

「……」

 もはや言葉が出ない。

 でも、痛みを耐えるような彼の表情がフッと憧憬(どうけい)を込めたものに変わる。


「そんなとき、ギンが三つ子が必要だからよこせって突然言いに来てさ。当然あいつら力技で追い返そうとしたんだけど、てんで敵わなくて……」

「ギンって、そんなに強いんですか?」

 弱そうには思えないけれど、そこまで強いのかと純粋に驚く。
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