シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 いや、出来ないでしょう。


 いきなり筋肉語り出したし……。

 確かに引き締まってていい体してたと思うけど……って! 何考えてるのわたしは!?


 余計に恥ずかしくて鼓動が早まってしまう。


 そんなやり取りをしているうちに、噂のギンがリビングへ入って来てしまった。


 ちょっと待って!

 わたしまだ落ち着けてない!


 むしろさらにドキドキしてしまっている気がする。

 そんなわたしに気づいてか気づかないでか、ギンは真っ直ぐわたしのところまできて手を伸ばす。


 わずかに細められたアンバーの瞳。

 そこに(かす)かに揺らめく妖しい光。

 その瞳に魅入られたように視線を捕らわれていると、彼の硬い手がスルリと頬を撫でた。


「ん……」

 思わず小さく声をもらすと、彼の赤みがかった瞳に熱が込められたのが見えた気がする。

 それだけでまた魅了の魔法にでもかかったみたい。

 艶美に微笑むギンから目が離せなかった。


「待たせたな。……じゃあ行くか」

 そう言ってわたしの手を引き立ち上がらせるギン。

 わたしは、昨日と同じように誘われるままついて行く。

 何か言いたいことがあったはずなのに、溶かされた問はまだ元の形に戻らない。
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