シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 そのままわたしは促されるようにリビングへ先に戻された。

 魔性を秘めた存在から一度離れた事でやっと少し正気に戻る。


「……ギンはやっぱり魔女だ……」

 ドアの前でポツリと呟いた言葉は、その場にいる誰も聞いてはくれない。

 フラフラとソファーに座り込み、いまだほてる頬を冷ますよう手をパタパタさせた。

「ん? どったの?」

 そのときになってやっと岸本くんが反応してくれる。


「……いや、ギンって色気凄いよね……」

 いまだにドキドキと早い鼓動を持て余しながら、とりあえずそんな感想をもらした。

「ギンさん? まあ、大人っぽくてカッコイイよな」

 単純に同意して欲しかっただけなんだけど、何か違う答えが返って来る。


「いや、まあ、うん、そうなんだけど」

 あの魔性の色気をどう伝えたものかと悩む。


「ユキちゃん無理無理。そいつ感性がお子様だから分からないって」

「颯介さんひでー!」

 颯介さんの突っ込みに岸本くんはショックを受けたような表情で悲鳴を上げる。

 でもそこに伊刈くんからさらに突っ込みが入った。


「実際お子様だろうが。ギンさんの細身でありながら引き締まった筋肉、そしてそこから引き出された力による強さ。それらから醸し出される色気が分からないんだからな」

『………………』

 ただ、その伊刈くんの意見には誰一人同意しない。
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