むり、とまんない。
***


だれも、いない……。

それからそのまま保健室にやってきた私たち。


ドアには「保健医、今日一日不在」の文字が書かれた紙だけが貼ってあって。


午後の心地いい陽射しが差し込む窓には、そよそよとカーテンが風に揺れている。


「下ろすよ」


そして遥はそっと私をベッドに下ろす。


「べ、べつに私、けがは……それより遥は……」


指、大丈夫なの。

そう、聞こうとして。


「胡桃」

「っ……」


耳にキスできちゃうかと思うほど、唇を寄せて名前を呼んだ遥は。

同じくベッドの上、私の隣に腰かけた。


「胡桃」


そしてもう一度。

今度はかすれた声で、名前を呼んで。

私の両頬をそっとその優しい手で包み込んで、コツンとおでこを合わせた遥は。


「胡桃。好きだよ」


涙が出そうなくらい、優しくほほえんだあと。

息もできないほど強く、ぎゅうっと私を抱きすくめた。
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