むり、とまんない。


「『よんで、胡桃』」

「う、あっ……えっと……」


イジワルに微笑んでいた顔はいつの間にか。

ん?と首をかしげて、ただ目を細めてやわらかい笑みを浮かべるだけ。


「はずかしい?
大丈夫、俺しか聞いてないし」
『はずかしがってんの、やばい。
めちゃくちゃかわいいって。かわいいがすぎる』


「ううっ……」


そーじゃなくて……っ!

かわいいかわいい、うるさいって言ってるの!!


「なら、これならいい?
顔、見えないし」

「っ〜!!」


ますますむりだよ……っ!!

腰に回った腕と、するりと絡まる指。

耳にキスができちゃうほど近づけられた唇と。


そして鼻をくすぐるオレンジの香りが。

ぜんぶがまた一度、体温を上げる。


「ほら、言ってみ?
遥って」

「……はる、か」

「もういっかい」
『もっとちゃんと。
昔みたいに』

「はるか……」


「っ、はぁ……もういっかい」
『あー……久しぶりによばれた。すっげえ嬉しい。
でもまだまだ。
ぜんぜん足んない』


うええ、ま、まだ……?


「き、聞こえてるでしょ……?」

「うん。
でも胡桃の声不足でどうにかなりそうだから、あと5回と、終わったあともちゃんと遥ってよんで」
< 90 / 346 >

この作品をシェア

pagetop