その星、輝きません!
 部屋のテラスに海をながめるように置かれた大きなソファーに彼と並んで座った。部屋に用意されたワインでもう一度乾杯した。

 お皿に切り分けられたケーキを口に入れる。

「美味しいー」
 
 ワインを飲みながら、まったりとした夢のような時間だ。


 ブルブル……


 テーブルの上のスマホの光が、良太の名を知らせる。

「ごめんなさい」

 一応、彼に断りを入れて、スマホを手に取った。

『もしもし、良太?』

『姉ちゃん、誕生日おめでとう!』

 良太の陽気な声が、聞こえてきた。周りが賑やかそうだ。友達とでも飲んでいるのだろう。


『ありがとう。しっかり、あんたに騙されたわ』

『まあ、そう言うなって。たまには、いいだろう? ところで、どこにいるんだ? 焼肉食わせてもらえたか?』


『何処って? よく分からないけど、沖縄の離島らしいわ。すごく豪華な、焼肉食べたしね』


『へっ? まさか、おっさん本当にジェット機持っていたんじゃないよな?』

『なんか、持っているみたい』


『まじか…… それで、空港って言ったんだな。まさかとは思うが、プール付きのヴィラとかじゃないよな?』


『よく分かったわね。今、部屋のプールにいるのよ』


『あはははっ もしかして、おっさんの物かもしれないぞ』

『まさか……』

 笑ってみたものの、有り得るかも……


『まあいいや。とにかく、楽しんで来いよ』


『そうね。そうするわ』


 良太に言いたい事は沢山あるが、せっかくおめどとうの電話をくれたのに、小言を言うのはやめておこう。

 スマホをテーブルの上に戻した。


「良太か?」

「うん」


 私は、顔を上げて星空を眺めた。


「やっぱり、星の数多いな」

 隣りで彼も空を見上げたようだ。
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